交通費の会社負担はいくらまで？｜通勤手当との違い

交通費や通勤手当、これらは混同されがちですがそれぞれ異なる費用のため、適切に運用することが大切です。企業は両者の違いを理解しつつ、自社の制度を整備し、運用していくことが大切になります。

<目次>
1. 交通費と通勤手当の定義
　1_1. 交通費とは
　1_2. 通勤手当とは

2. 交通費の会社負担額はいくらまで？
　2_1. 非課税の上限額とは
　2_2. 非課税上限額を超えた場合

3. 通勤手当の支給ルール
　3_1. 支給方法：定期券支給、実費精算、給与上乗せ
　3_2. 通勤経路のルール
　3_3. 支給金額と有料道路や領収書の扱い

4. 旅費交通費の精算方法と注意点
　4_1. 領収書提出時の注意事項
　4_2. 実費精算の仕組みと精算時期

5. 旅費交通費と通勤交通費に関するトラブルの回避策
　5_1. 不正申請を防ぐための制度明確化
　5_2. 不正申請を防ぐためのの管理ポイント

6. まとめ

交通費と通勤手当の定義

交通費と通勤手当は、それぞれどのような目的、性質を持つものなのかを整理していきます。

交通費とは

交通費とは、主に業務上必要な移動に伴う経費になります。これは旅費交通費に該当します。
具体的には、出張や顧客訪問に伴う交通手段の費用が該当します。この費用には、公共交通機関の料金やタクシー代、さらには自家用車を使用した際のガソリン代や駐車料金などが含まれます。業務の性質を持つ移動に関連する費用のため、企業はこの交通費を社員に負担させないことが多く、旅費交通費として精算を行います。経費として計上することで、企業にとっても税務上のメリットが見込まれます。

通勤手当とは

通勤手当は、社員が自宅から職場までの通勤にかかる費用を企業が補助する手当にあたります。通勤交通費とも呼ばれますが、この手当は給与の一部として位置づけられ、所得に該当します。
通勤手当は企業の義務として定められてるわけではないため、支給するか否かは企業の判断に任されています。そのため、通勤手当を支給することは、福利厚生制度の一環を成しているのです。
また、企業が通勤手当を支給する場合には、就業規則にその旨を明記する必要があり、定期支給か現物支給なのかなどの支給方法や支給タイミング、利用する交通手段毎に明確に定めておき、社員間の公平性を保ち適切な運用を行うことが求められます。

交通費の会社負担額はいくらまで？

旅費交通費は業務上必要な移動にかかる費用のため、企業が従業員に支給する義務がありますが、通勤交通費の会社負担は、特に法律で定められてるものではなく、企業が任意で設定できます。
通勤交通費を支給する場合は、国税庁が定めた非課税限度額が存在しますので、その上限を考慮し、業務の実態に合わせた支給金額を設定することが大切です。

非課税の上限額とは

通勤交通費の非課税上限額は、公共交通機関の場合、月15万円を超える部分が課税対象となります。つまり、月15万円までは非課税の範囲内となります。多くの企業はこの上限額を考慮しながら通勤交通費の支給を行うことが一般的です。
また、交通用具の場合は、片道の通勤距離によって非課税の上限額が定められています。
交通用具の非課税限度額についての詳細は、「マイカー通勤者の通勤交通費はどう考えればいい？計算方法のあれこれ」の記事をご参照ください。

非課税上限額を超えた場合

通勤交通費の支給が、非課税上限額を超えた場合、超過分は従業員への課税対象として取り扱われます。具体的には、通勤手当が月15万円を超えた際、その超過分に対して所得税が課せられます。その結果、社員の手取り額が減少する可能性があります。このため、企業は通勤交通費の支給額を設定する際には、上限額を考慮することは大切です。
さらに、非課税枠の仕組みを正しく理解し、従業員にその内容をわかりやすく説明することで従業員の負担を最小限に抑える取り組みが不可欠です。

通勤手当の支給ルール

通勤手当の支給ルールは、企業が従業員の通勤交通費をどのように支給するかを従業員、企業双方で明確にするため、重要な取り決めです。支給ルールを決定する際には、多方面で考慮したルール策定が望まれます。

支給方法：定期券支給、実費精算、給与上乗せ

通勤手当の支給方法には、主に3種類の方法があります。
ひとつ目の方法は、「定期券支給」です。この方法では、事前に選定された交通機関の定期券が従業員に支給される方法です。この形式を採用することで、事務処理の負担を軽減する効果があります。

ふたつ目の方法は、「実費精算」での支給です。これは従業員が通勤に必要な通勤交通費を自身でいったん立て替え、その費用を会社に申請して精算してもらう仕組みです。この方法では、特定の通勤ルートに制限がない柔軟な対応が可能となり、交通手段が豊富な地域での従業員の通勤方法にも適しています。ただし、日々のルートの妥当性や実費金額の正確性の確認など業務が煩雑になるデメリットが考えられます。

最後の通勤手当の支給方法として、「給与上乗せ」という方法あります。この方法では、通勤に必要な費用を従業員の通常給与に追加し、一括して支給します。この方法では、従業員への通勤交通費の支給を簡潔な手続きで提供できるため、企業側の手間を最小限に抑えることが可能です。通勤手当の支給方法をシンプルに運用したい企業に適した方法ともいえます。

通勤経路のルール

通勤経路に関しては、法律や社内規定の遵守を基本となりますので、従業員が通勤手当の支給を受けるために、事前に合理的な通勤ルートを選定し、その内容を企業へ適切に報告する必要があります。ただし、通勤経路については、特別な事情がある場合には柔軟な対応が考慮されることは少なくありません。

旅費交通費の精算方法と注意点

旅費交通費の精算方法は、従業員が立て替えた実費を会社に請求する流れになることが一般的です。特に、旅費交通費は日常的に発生しますし、精算時には領収書の添付が必要とされるケースが多く、これらを的確に管理し透明性を確保することで、費用の不正利用を防ぐことができます。

適正な精算を行うためには、事前に支給ルールや精算方法を明確にしておくことが必要です。領収書の管理や提出方法についても統一されたルールを設けることで、より円滑な運用が期待できます。

領収書提出時の注意事項

旅費交通費の精算を行う際には、領収書の提出が必要不可欠となります。領収書は、経費の正当性を示す重要な証拠であり、金額や日付、発行者名などの正確な情報が記載されていることで正当な情報と判断されます。
領収書に記載されている内容が不明瞭または間違っている場合や、領収書が不足している場合には、精算が認められないこともあります。
また、多くの企業では領収書の提出期限が定められているため、従業員はこれを遵守することが必要です。提出期限を守ることで、支払いが遅れることを防ぐことができます。
そのため、従業員へは、出張や業務に関連した旅費交通費を立て替えた場合の領収書を確実に保管し、期限通り提出するように周知徹底を行います。

実費精算の仕組みと精算時期

実費精算は、従業員が業務のために使用した移動の料金やその他の経費を立て替えた後、会社に対しその実費を請求する仕組みです。

精算時期については企業ごとにルールが異なりますが、一般的には月末や翌月初めに締め切りを設け、精算作業を進めるケースが多いでしょう。そのため、従業員には指定された精算期日を遵守し、必要な手続きを完了するような運用が求められます。業務が多忙になると精算処理が遅れることもあるため、従業員へ常にルールを周知徹底を行います。

旅費交通費と通勤交通費に関するトラブルの回避策

旅費交通費と通勤交通費に関するトラブルを回避するために、不正申請を防ぐための仕組みが必要になります。企業は旅費や通勤交通費に関する規定をしっかりと文書化し、従業員に周知徹底することでトラブル回避に繋がります。

不正申請を防ぐための制度明確化

不正申請を防ぐための取り組みは不可欠です。
企業の就業規則や規定に、旅費交通費や通勤手当の支給条件、支給方法を詳細に記載しておくこと、従業員が規定をいつでも閲覧できる環境の整備を行います。これにより、従業員が規定内容を正しく理解することができ、不正の抑制にもつながります。
また、不正を未然に防ぐため、申請内容を確認する仕組みを確立することで不正申請の早期発見につながります。

不正申請を防ぐためのの管理ポイント

不正申請を防ぐための管理ポイントですが、まずは、支給金額、通勤経路に関する規定を従業員に周知し、従業員が理解することが、不正申請のリスクを減少させる手立てとなります。具体的な経路や時刻を記載した申請書の提出を求めることで、実際の状況を把握するといった取り組みも有効です。

次に、領収書の提出を義務付けることです。旅費交通費や通勤手当に関わる費用は、必ず領収書提出を義務付け、確認作業を徹底することで、不正な経費申請を防ぐことができます。加えて、通勤経路については、合理的経路の判定条件を明確化しておきましょう。

加えて、定期的に申請内容を監査する、チェック体制の導入が望ましいでしょう。特定の従業員が異常に高額な申請をしていないか、または同じ内容で何度も申請していないかなど、違和感のあるデータを抽出し、詳細な調査を行うことは、不正申請の早期発見につながります。

最後に、従業員への教育も不可欠です。交通費や通勤手当についての正しい知識を理解を促すため、定期的な研修を実施し、意識を高めることが重要です。こうした取り組みを通じて、不正申請の防止に努めていきましょう。

まとめ

旅費交通費は、主に業務に必要な移動にかかる費用を指し、通勤手当は、毎日の通勤にかかる費用を補助する手当のことを意味します。これらの定義を正確に理解することで、会社負担の範囲や税務面での注意点をしっかり押さえることができます。

通勤手当の場合、非課税限度額の上限を超えると課税対象となるため注意が必要です。
通勤手当の支給ルールにも細かい取り決めがあることに留意してください。支給方法には「定期券支給」「実費精算」「給与上乗せ」がありますが、企業によってその運用は異なりますので、自社にあったルールを制定していきましょう。

旅費交通費の精算では、領収書の提出が求められることが一般的で、領収書の不備や改ざんは不正申請につながるため、しっかりした管理体制が求められます。
いずれの場合も、不正申請の防止が一つの課題となりますが、制度の明確化や運用管理の徹底により、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

通勤管理ツールを利用することで通勤手当の不正申請の未然防止が実現できます。
「通勤管理Arvo」では、合理的な通勤経路を判断し、正確な通勤手当額を算出しますので、不正申請の防止に役立ちます。

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